中小企業M&Aで最も気を遣うこと(01)

社員へのディスクローズ(発表)

M&Aを実行した後になってから当社に、「M&Aが上手くいかなかったので困っている」という相談をうけることがあります。
その中でよくあるケースが「社員へのディスクローズの失敗」によるものです。
私は経験上、「社員への発表」は最も重要なことだと考えています。

これに失敗すると、

  • 社員の仕事に対するやる気が失せてしまう
  • 社員の買い手企業への信頼感、前オーナーへの信頼感が無くなってしまう
  • 社員の反対にあってディールそのものがブレークし、経営も失速してしまう
  • 賛成派、反対派に分かれ、会社が分裂してしまう

というようなことが起こります。中小企業ではこれらのことが発生すると致命傷になってしまいます。

さらに「社員へのディスクローズ」が重要な点は、「やり直しがきかない」ということです。
契約書や企業評価も重要ですが、中小企業のM&Aは基本的に「恋愛結婚」ですから、多少のミスはお互い合意の上で修正・やり直しがききます。

しかし、「第三者の心の問題」が絡む「社員への発表」はやり直しがききません。ですから、幹部への根回し、など周到な準備が必要です。
しかも、買い手企業が上場会社の場合には「適時開示」や「インサイダー」などの問題が絡みますから、根回しする時間や方法などを分刻みで考えておく必要があります。

ここで失敗すると、

  • 譲渡企業は社員分裂を起こして経営が失速する
  • 買い手企業はすでにプレス発表を行い、引くに引けない

という最悪の事態を迎えることになりかねません。

ぜひ、最後の大仕事「社員への発表」は慎重に、できたら専門家の指導・アドバイスのもとに行ってください。