M&Aにも「赤い糸」

人間の結婚では、運命的な相手と出会うことを「赤い糸で結ばれていた」などと言います。

M&Aの世界でも、「赤い糸」があるような気がします。

買い手がすごく積極的でも、提案検討の最初の段階で何か違和感を感じることがあります。
うまく表現できないのですが、「運命的」ではないのです。
でも、上手くいかない明確な根拠がありませんから、そのままM&Aの検討が進められます。

しかし、最初に違和感を感じた場合、やがて最終局面になってから破局を迎えることが多いようです。

後で冷静に考えてみれば、「企業文化が違う」、「社長の人生観が違う」、「社員に対する価値観が違う」などで違和感を感じていることが多いのだと思われます。
また、検討初期に「シナジー効果」を見込んだものの、実現が難しいと後で気付くケースもあります。

最初は買い手企業・譲渡企業ともに熱くなっているのでM&Aの検討が積極的に進められますが、最終段階になり買収監査で公認会計士なども参加して冷静になってきたら、見込が過大だったことを悟るのだと思います。

反対に、なぜか「非常にうまくいく」と予感させる相手先もあります。
最初の段階では、「株式価格」、「社員引継ぎの条件」などでうまく折り合わずに喧々諤々の議論がされるのですが、それでも「絶対うまくいく相手だ」と感じることがあります。

このような相手は、M&Aの検討・交渉が進むにしたがって意気投合し、経営者同士が尊敬しあい、非常に良い感じでゴールインします。
人生観、価値観、経営理念などが一致しているからでしょうが、それだけでは片付かない何かがあります。

M&Aの検討を始めるときには素直な気持ちで相手に向き合い、一生連れ添っていける相手かどうか?を冷静に判断することが重要です。

巨大企業のM&Aと異なり、中堅中小企業のM&Aは経営者同士が直接的に係り合って相乗効果を出していく経営を行うことになります。

成功をおさめるために、大企業のM&AではPMI(ポストマージャーインテグレーション)が注目されていますが、中小企業のM&Aでは理論的な相乗効果に加えて「相性」のようなものが非常に重要と感じます。