中小企業のM&Aを行う上での難しい問題は、「創業社長の心理」、「企業価値算定」…たくさんあります。
今日は「企業価値算定」に関して考えてみました。
企業価値(株価)算定の基礎になるのは、中小企業の場合は「時価純資産」です。
時価の問題はさておき、「税務会計」と「財務会計」のもたらす「純資産」把握の違いが問題を起こしているというお話をします。
日本の中小企業では、納税計算するための「税務会計」中心、ということが一般的です。
“退職給付債務の厳密な計上”や”減損会計を適用する”ような、いわゆる「財務会計」を行っているのは、「上場企業4000社+その子会社+上場予備軍+優良中堅企業」の4〜5万社位でしょうか?
「M&Aで会社を存続させよう!」という志の高い経営者は「優良法人」などの認定をもらっていて、自分の会社の会計に自信と誇りを持っています。
しかし、一方で「税務会計」では第三者へ会社の実態を説明する上では十分ではなく、「財務会計」的な手法を用いることも必要です。
譲受け企業が上場企業の場合、当然「財務会計」が基準になり、買収監査も「財務会計」基準で行われます。
これは、譲渡企業の中小企業の社長や顧問税理士には感覚的にしっくり馴染まないことが多く、感情論に発展したりすることもあります。
一方で、「財務会計」も、減損会計、税効果会計などの一部では中小企業の実態にそぐわないものもあります。そこを指摘すると、買い手企業もしっくりこないことになります。
結果として、譲受け企業にも譲渡企業にもストレスが生じます。
中小企業の実態を表し、さらに譲渡企業・譲受け企業の両サイドの実感に即したストレスのない評価を提示し、落とし所を見つけていく作業は、我々M&A仲介者の重要な仕事です。
これには、企業価値に対する確固とした見識と豊かな経験とバランス感覚が必要です。
企業価値算定の絶対的な尺度として、モノの鑑定方法や会計基準などに従っていればいいというものではありません。
中小企業のM&Aにおいては、個々の案件に即して柔軟に考え抜いて、両社の納得のいく算定を心がけることが重要だと思います。